Je t'aime comme la tombe.

フランス革命萌え語り。あとは映画と野球?ハムファンです。

ベン・ハリスン『死せる花嫁への愛』ロマンティックとブラックコメディの間

本を読んでこんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。

『死せる花嫁への愛―死体と暮らしたある医師の真実』|感想・レビュー - 読書メーター ベン ハリスン『死せる花嫁への愛―死体と暮らしたある医師の真実』の感想・レビュー一覧です。ネタバレを含む感想・レビューは、 bookmeter.com  

放射線技師で自称医師のカール・フォン・コーゼル(カール・タンツラー)が、恋した女性エレナの遺体を死後2年後にエンバーミングした上で共に7年暮らしていた実際の事件について書かれたノンフィクションだ。事件自体の概要はこちらを見るとわかりやすい。(リンク先はエレナの遺体の写真が登場するので苦手な方は注意。ちなみにこの記事に写真はありません。)

※なぜ「フランス革命」のタグつけたの?20世紀アメリカの話だろ!仏革の話が読みたいんだけど!と思った方へ。余談まで飛んでください。

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ロックンロール・ハイスクール(1979)-音楽の歓びとユートピア

※ネタバレ注意!!

初めて見た時、人生最高の映画だと思った。再び見ても、やはり人生最高の映画だ。

Rock 'n' Roll High School (ロックンロール・ハイスクール)


監督:アラン・アーカッシュ
製作総指揮:ロジャー・コーマン
出演:P・J・ソールズ(リフ)デイ・ヤング(ケイト)ヴィンセント・ヴァン・パタン(トム)メアリー・ウォロノフ(トーガー校長)ラモーンズ(本人)etc. 
名古屋シネマテークで鑑賞。誰もいなかったら踊りながら観ていた(なんとか我慢した)

この映画には音楽に触れた時の歓びや陶酔、魔術としての化学、棘はあるがとにかく愉快なブラックユーモア、圧政を敷く学校の破壊など、私の人生や美意識の大半が詰まっている。

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怪傑ダントン(1921) - 神様あの子を奪わないで

後半の方は妄想になってしまいました。嫌な予感がする方は読まないでください。

今回紹介するのはフランス革命を描いた1921年サイレント映画、『怪傑ダントン』である。実はかなりフランス革命、特にこの裁判周りが好きなのだが、いったん熱が沈静化していたのでnoteではあまり書いていない。しかし最近再発したので、グダグダと感想を書いた。

Danton(1921) 邦題「怪傑ダントン」
アメリカでのタイトルは"All for a woman"だったらしい。他にも「ギロチン」(ソ連)「マルセイエーズ」(スウェーデン)「The loves of mighty」(イギリス?)のタイトルで公開されたこともあるらしい。

youtu.be

 

監督:ディミトリー・ブコウスキー
製作国:ドイツ
キャスト:エミール・ヤニングス(ダントン)オシップ・ルニッチ※(カミーユ・デムーラン)シャルロッテ・アンダー(リュシル)マリー・デルシャフト(ジュリー)ヴェルナー・クラウス(ロベスピエール) エドゥアルド・フォン・ヴィンターシュタイン(ヴェスターマン将軍)ロベルト・ショルツ(サン=ジュストヒルデ・ヴェルナー(バベット(本作オリジナルキャラクターの民衆の少女))etc. 
※本作ではJosef Runitsch名義で出演。どうやらルニッチは、外国の舞台や映画に出演する時には自分のファーストネームをその都度各国語に合わせていたらしい。

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白い布-布の庭に遊ぶ 庄司達

白い布は心を落ち着かせる。シーツはいつも真っ白だし、白い服を来ていると心がまっさらになったように感じる。白い布を見ているうちに心身ともに包まれたような心持ちになり、傷ついてざらついた痛みを叫ぶ魂も癒やされた。

布の庭にあそぶ 庄司達 @名古屋市美術館

色々なことが重なり心がささくれだっていた。暗いニュース、といえども戦火や事故のような明らかな悲劇ではなく、議論や、むしろ誹謗中傷の的になりがちな「問題提起」的なニュースを見るたびに腹を立て、野球の結果に対しても血圧を上げていた。挙句の果てには鏡に映る自分の姿を罵り続けていた。自分の身体を愛せないのは以前からのことだし、今後も愛すことは金輪際ないだろうが。
一方で嫌味なまでに晴れた空を見ていると、どこかに出かけなければ半ば脅迫的な思いにかられた。このままでは人生を壊しかねないと第六感とでも呼ぶべき感覚のためかもしれない。
外へ出ると強すぎるきらいはあるものの心地よい風が私の顔を掴んだ。このような晴天ならば、白川公園へ行こう。名古屋市美術館に行こう。そう決意して地下鉄駅へと向かった。

名古屋市美術館は一件ありふれたハコモノのようだが、実のところ黒川紀章建築だけあってところどころユニークだと感じる。渡り廊下や天窓は、ことに晴れた日には心地よい。

さて現在の企画展は「布の庭にあそぶ 庄司達」と題されたインスタレーションだった。「布の庭」との表題の通り、白い布が様々な大きさ、様々な手法で展示されている。


浮かぶ布、糸で吊るされた布(糸は見るべきものではなかったのかもしれない)、覆う布、包み込む布。いくつかの作品は布の下や間を通り抜け、触ることができる作品もあった。

また布の下をくぐった後上から見ることができる展示や、2階で俯瞰した後1階に降りてその構造を眺めることのできる作品もあった。
無限とも思える様相を見せる布に見入っているうちに、いつしか自身が白い布に包まれているように感じた。傷を覆う包帯や疲れた体を包むシーツのように、展示の布が私の疲れ果て傷ついてなお他者を傷つけようとする心身を包み込み、痛みを少しずつ消し去っていくように感じた。

あえて作品が持たされた意味や作者の意図は読まず、考えまいとしていた。ただ私にとってはあの布が癒やしであり、心を晴らすようなものであったというだけで良いと感じた。

会期は続くのでまた晴れた日に見に行こうと思った。再び白い布と相対する日に、私は何を感じるのだろうか。

瓶の香水を買った話

ついに瓶で香水を買ってしまった。

État libre d'OrangeのLa Fin du Mondeである。

「キャラメルポップコーン」と形容されているのを度々目をするが、私の肌では香ばしさに加えスパイスが強く出てそこが気に入っている。最後に肌に残る甘い香りがたまらない。「世界の終わり」という名前もたまらない。半分は名前につられて好きになったのかもしれない。

この香水の名前や香りについては2年前?に書いていた。


香水は迷惑、香害とみなされると思いこんでいたので今まで5ml程度のサンプルサイズしか手が出せなかった。しかし色々なことがあり、「つけすぎとTPOのみ注意を払えば好きな香りをつけるべきだ」と2021年に思い至った。

同時に、「この香りは私、ルークシュポールだ」と思わせるような香りが欲しくなり、好きな香りやこうなりたいという香りについて考えた結果

・グルマン、スパイス

・甘い香りは好きだがフローラルは食傷する

ユニセックス意外と好きかも

という3要素を重視することにした。

またメーカー、ブランドごとに各銘柄を超えた香りの特徴があると思っているが、一番気に入ったのはEtat libre d'Orangeだった。

上記3要素を満たし、かつ名前にも惹かれていたのでLa Fin du Mondeを私の香りにしようと思った。しばらくはサンプル瓶を使っていたが、違和感などはなく、むしろ使うたびに好きになったので50ml瓶をついに購入したのである。

同じELO(バンドではない)ではShe was an anomalyやLike Thisのサンプル瓶も持っていたが、anomalyは良い香りだがよくある感が気になり、Like Thisはユニークで秋口に良い香りだが瓶で常用するほどではないと思った。

やはり私の香りはLa Fin du Mondeである。

所用で東京に行ったとき、あと数日で閉店する池袋Noseshopで購入した。その時ついでに香水ガチャも回した。そこで出会ったのがMaison MatineのBain de Midiだった。ココナッツメインの、本当にビーチや海の香り。2月だったが、晴れた日につけると夏が待ち遠しくなる。私はマリン系の香りも好きかもしれないと気づいた。ルームフレグランススプレーで、マリンの香り(メーカーや銘柄などの詳細失念)で気に入ったものがそういえばあった。冬になり忘れてしまっていたが。

その後名古屋にもNoseshopが出来たことを知ったので、夏頃にBain de midiを購入するかもしれない。札幌店も池袋店もないように、Noseshopは店舗入れ替わりが激しい印象があるので名古屋も買い支えたほうが良いかもしれないも思った。

名古屋店を訪れてみたが、種類が揃っていて東京で嗅げなかったELOの香水も試すことができた。また香水ガチャを回すとまたMaison MatineのHasard Bazarだった。トンカ豆のラストノートが甘くて良い感じ。

また好きな香水メーカーが見つかったようだ。


2021年/砂の時代

2021年もそれなりに映画は観たが、映画館ではやたらと砂を見た気がする。数えてみると砂が印象的な映画は3つあった。占いでは「水の時代」に入ったそうだが、私にとって2021年は「砂の時代」だったのか?

※ネタバレ注意。またホドロフスキー以外は全て映画館で見た。

ドリームランド

開拓時代のアメリカが舞台。マーゴット・ロビーが銀行強盗犯アリソンを演じていた。舞台設定は魅力的だが、ストーリーにあまり面白みが感じられなかった。特に主人公ユージンが人を撃った後パニックになったくだりにツッコまざるをえなかった。「わかってて銀行強盗したんじゃないのか?」アリソンが気の毒になってしまった。

ただしユージンが家出した日の砂嵐の描写は圧巻だった。砂が口に入ってくるように思えた。ユージンが住んでいた町の寂寥感や未来の無さは、おそらくこの大量の砂によるのだろう。唐突に差し込まれる彼の実父がいる(と想像している)メキシコ?の、インディーポップのMVのような画面が、余計にテキサスの砂をひしひしと感じさせた。

Netflixで見た『フィアーストリート』part3でも登場したが、この時代のアメリカの町内集会はとても恐ろしいと感じた。開拓地に必要なのは理解しているが、映画ではたいてい悲劇を増幅させる装置であると感じた。

デッドロック


1970年のドイツ映画で、今年リマスター版が公開された。映画館で見た中では2021年ベストムービーかもしれない。映画全体に漂う虚無や投げやり、夢も希望も理想もないのがたまらない。そのくせみんなトランクの金銭を追い求めているが、本当に金銭が欲しいのだろうか?サンシャインが登場する前、ダムとキッドの奇妙な共同生活の緊張感漂いつつもどこか滑稽な様子が面白かった。特にダムが金を持ち逃げしようと車に乗る→車にいたキッドが銃を突きつけるあたりはほとんどギャグである。それだけにサンシャインが現れてからの物語の緊迫と狂乱がとても印象的だった。ドイツ映画はほとんど観ていないので、2022年はこのあたりの映画を掘ってみようと思う。

カンの音楽もとても良かった。聴こうと思っていて聴いていなかったので良いきっかけとなった。

デューン/砂の惑星

話題になっていたので駆け込みで見た。ヴィルヌーヴ特有の曲線的な未来の光景(建物の内容やインテリア?)が壮麗。(余談だが、同監督のブレードランナー2049も絵はとても好みだった。雪が出てくるとは思わなかった)内容は確かに予告編と言われればそれまでだが、娯楽として面白かった。特にダンカンのアクションは単純にかっこいい!!

番外編:ホドロフスキーのDUNE

ヴィルヌーヴデューンを見たので、こちらも見た。ホドロフスキー作品は見たことがなかったが、とても勇気づけられた。前述の『デッドロック』に雰囲気が似ていそうな『エル・トポ』や高校生の頃フライヤーをみて気になっていた『リアリティのダンス』あたりを見てみようか。

リンチ版デューンを見て元気がわいた下りが色々と最高だった。ここまで言われるとリンチ版デューンを見てみたくなる。

それにしても計画の豪華さに度肝を抜かれた。特にギーガーのハルコンネン城は見てみたかった。無謀な計画も恐れずにやってみよう。失敗なんてなんてことないのだから。そう心から思うことができた。明るい気持ちになることができる、年の締めくくりに良い映画だった。

※2021年ラスト1本は『ラストナイト・イン・ソーホー』でした。



感想の断片:二階堂奥歯『八本脚の蝶』

この本を買ったのは昨年1月くらいだったと記憶している。

並外れた読書家がいたものだなと思った。出てくるファッションブランドは憧れながら高価で、社会人になれば買えるのだろうかと思った。

私もそれなりに読書家ではあると思ってきたし、所属してきた多くの集団の中で実際に一番読んでもいたが彼女には負けるだろう。

彼女は幻想文学愛好家だったようだが、そのあたりは私は疎いので勉強になる。私はこの本をブックガイドとして見ているのかもしれない。

彼女は残酷・グロテスクな物語も好んでいたようだが、一方で「フェミニスト」を名乗り「女」として扱われることを嫌悪している。「フェミニスト」とか「マイノリティ/マジョリティ」の枠に当てはめられたくないから私は枠組みをあえて無視して世界と向き合おうとしてきたが、彼女はあくまで「自身は女」ということを意識してきたようにこの日記からは思われる。彼女はいやでも「女」を意識しなければならない環境にいたのだろうか?

カトリックの聖女たちにあこがれていたようだが、ジッド『狭き門』のアリサについてどう思うか聞いてみたかった。初めて読んだ時、真っ先に思い出したのはアリサの日記だったからだ。

非・幻想文学的なフランス文学についてはほとんど言及がない。あまり好まなかったのか、読んでも感想を記すほどではなかったのか。一方で漫画もよく読んでいたと気づいて驚いている。

結末については何も述べまい。人生やその終わり方に文句をつける筋合いはない。