Je t'aime comme la tombe.

フランス革命萌え語り。あとは映画と野球?ハムファンです。

『阿寒に果つ』と「よみがえれ!とこしえの加清純子 ふたたび」展

www.amazon.co.jp 雪に埋もれ眠り、凍りついて死ぬという象徴的なイメージ。 好きな小説なのに、何か書こうとするとどうしても筆が止まってしまい三年くらい放置していた。今ならまとまったことが書けそうなのでキーを叩いている。 純子の姉、蘭子が妹に対し…

本当は暗い文学キャノンの世界 (あるいはAO3のレーティング)

拙い英語でAO3 (Archive of our own, グローバルな小説投稿サイト) にたまにファンフィクを投稿している。ファンダム自体マイナーだしそれほど見られていないのだが、「いいね (kudos)」やコメントがつくと嬉しい。 このAO3に投稿するにあたってほぼ毎回頭を…

2023年・私的ベスト映画5選

2023年は映画を見た一年だったので、印象に残った作品をまとめる。新作として映画館で見た映画に限った。また順位はつけたくなかったので、紹介順は順不同である。 私、オルガ・ヘプナロヴァー Pearl/パール テス (4Kリマスター版) 野球どアホウ未亡人 ロス…

墓の彼方からの愛とクィアな欲望―ミシュレ『革命の女たち』

このブログでデタラメだ作り話だと何かにつけ批判しているジュール・ミシュレのLes Femmes de la Révolution (1854)(邦訳『革命の女たち』なおネットで公開されている。)だが、文学作品として面白いのは否定できない。 オランプ・ド・グージュのイメージ受…

『野球どアホウ未亡人』"野球"の快楽に堕ちてゆけ(ネタバレあり)

※大いにネタバレしています。 先日、刈谷日劇で『野球どアホウ未亡人』を観た。 youtu.be この映画を知ったきっかけはfilmarksの「近日公開映画一覧」だった。妙にインパクトのあるポスターとタイトルに目が釘付けになった。 なんてったって「野球」で「どア…

ガブリエル・ダントンを掘り起こしたのは誰か?

ジョルジュ・ダントンの妻であるガブリエル・ダントン(旧姓シャルパンティエ)が有名になったのは、死後一週間後に遺体が墓から掘り起こされ、その時に取られたデスマスクをもとにした胸像が制作されたからである。おかげで彼女の人物像は誰も知らないのに…

歴史には善人も悪人もいない『ロスト・キング 500年越しの運命』

映画の『ロスト・キング 500年越しの運命』を見た。 歴史好き、特に ・毀誉褒貶が激しい人物が好き/興味がある ・史料が少なく、どんな人だったのかよくわからない人物が好き/興味がある ・歴史創作好き におすすめしたい。 この世にはいい人も悪い人もいな…

リュシル・デムーランの日記 (Journal 1789-1793) とその写し間違いについて(追記: mastodonアカウントの話)

革命家カミーユ・デムーランの妻で、自身もギロチンで刑死したリュシル・デムーラン(デュプレシ)の日記を読んだ。ダントンの最初の妻であるガブリエル・シャルパンティエに関する信頼できる一次資料は親しい友人だったリュシルの日記と手紙しか今のところ…

ジョルジュ・ダントンから妻ガブリエル宛の手紙(1792年12月17日)―和訳と考察

今年(2023年)3月にオークションにかけられた、革命家ダントンから妻ガブリエル・シャルパンティエ宛ての手紙を日本語訳した。同じオークションに出品されたロベスピエールが妻を亡くしたダントンに宛てた手紙はやたらと注目されたのに、亡くなったガブリエル…

笑いながら暗闇を駆ける― 極私的断章『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

サイコパスでも、私には見識がある。 どうして自分の身に起こることが何もかもうまく行かないという理由で、周りを傷つけてはいけないのか。 いつか嘲笑と私の涙を償わせる。 二人で一つになれることはそんなに高等か。なれない人間は出来損ないか。なのにど…

アレクセイ・トルストイ『ダントンの死』感想

有名な『おおきなかぶ』の作者でもあるロシア(ソ連)の作家アレクセイ・トルストイによる、ビューヒナー『ダントンの死』の翻案 (1919)。 存在はずっと知っていたが、戦前出版で図書館によっては貴重書扱いされているらしいので読むのは諦めかけていた。だ…

『1789 バスティーユの恋人たち』2023星組ライビュ感想

書こう書こうと思っているうちにもう革命記念日が到来してしまった。 先日(7月2日)、宝塚歌劇団『1789 バスティーユの恋人たち』のライブビューイングを観に行った。一瞬だけ宝塚大劇場に行ってみようかな?とはじめは考えたが、超人気だったらしいので断念…

オシップ・ルニッチのカミーユ・デムーランについて語りたい。

今日はカミーユ・デムーランがパレ・ロワイヤルのカフェ・ド・フォワで「武器を取れ!」と演説した日である。 というわけで、今日はとにかく私にとってのベスト・カミーユである『怪傑ダントン』のオシップ・ルニッチについて語りたい。 映画のあらすじや感…

クラスTシャツの亡霊

何度も書いているが、私の通っていた高校は校則が厳しかった。学祭も同様であり、「祭」のはずなのに制約が厳しすぎ、祝祭要素をどこで見つければ良いのかわからなかった。当然服装も制服オンリーである。さて、他の高校ではクラスTシャツなるものが制作され…

あの子は弱いからこそ強いんだ- ロマン・ロラン『ダントン』感想

今回はロマン・ロランの戯曲『ダントン』の感想。 同じ題材でもビューヒナー『ダントンの死』やアンジェイ・ワイダ監督の映画『ダントン』(原作はスタニスワヴァ・プシビシェフツカの戯曲)の影に隠れている感の強い(そもそもロマン・ロラン自体最近の日本…

名古屋シネマテークの閉館に寄せて

名古屋・今池にあるミニシアター「名古屋シネマテーク」が閉館するという。私はこのニュースが報道された日に、知らないままこの映画館に行ったので余計衝撃を受けた。いやテレビ局のカメラが入ってゆくのは見たのだが、「新作映画の監督でも来たのかな」と…

ブラック校則レジスタンス?-ビューヒナー『ダントンの死』

その誠実な連中ってのが我慢ならなかったんだ。ああいうそっくり返った謹厳居士たちを見てると、蹴っとばしてやらずにはいられなくなるんだ。僕の生まれつきの気性がこうなんだからな。(p. 136) 『ダントンの死』は個人的思い入れの強い作品なので、まずは思…

虚無の「英雄」と女性の声 - 『ダントン』(1983)

映像ソフトを購入したものの長らく見れていなかったアンジェイ・ワイダ監督の『ダントン』(1983) をやっと鑑賞できた。 反「英雄」的ダントン像 女性の声と抵抗 ウィークポイント 監督:アンジェイ・ワイダ 出演:ジェラール・ドパルデュー(ダントン)ヴォ…

エドガー・アラン・ポーの美女再生譚シリーズ

エドガー・アラン・ポーの「ライジーア」「モレラ」「ベレニス」「アッシャー家の崩壊」「エレオノーラ」と、死んだ(と思われ)埋葬された女性が様々な形で甦る一連のシリーズを読んだ。死んだ女が蘇るとか、墓が掘り返され棺が開けられるとか、そういう話…

『ナポレオン獅子の時代』フランス革命編感想

大仕事が一段落したので約10年前に5巻までで止めていた長谷川哲也『ナポレオン獅子の時代』(と『覇道進撃』)をまた読もうと思って、とりあえず持ってる5巻までを読み直していた。フランス革命は5巻までで大体終わりかな?(現在7巻まで進みました。先は遠…

ベン・ハリスン『死せる花嫁への愛』ロマンティックとブラックコメディの間

本を読んでこんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。 『死せる花嫁への愛―死体と暮らしたある医師の真実』|感想・レビュー - 読書メーター ベン ハリスン『死せる花嫁への愛―死体と暮らしたある医師の真実』の感想・レビュー一覧です。ネタバレを含む感想…

ロックンロール・ハイスクール(1979)-音楽の歓びとユートピア

※ネタバレ注意!!初めて見た時、人生最高の映画だと思った。再び見ても、やはり人生最高の映画だ。 Rock 'n' Roll High School (ロックンロール・ハイスクール) 監督:アラン・アーカッシュ製作総指揮:ロジャー・コーマン出演:P・J・ソールズ(リフ)デ…

怪傑ダントン(1921) - 神様あの子を奪わないで

後半の方は妄想になってしまいました。嫌な予感がする方は読まないでください。今回紹介するのはフランス革命を描いた1921年のサイレント映画、『怪傑ダントン』である。実はかなりフランス革命、特にこの裁判周りが好きなのだが、いったん熱が沈静化してい…

白い布-布の庭に遊ぶ 庄司達

白い布は心を落ち着かせる。シーツはいつも真っ白だし、白い服を来ていると心がまっさらになったように感じる。白い布を見ているうちに心身ともに包まれたような心持ちになり、傷ついてざらついた痛みを叫ぶ魂も癒やされた。布の庭にあそぶ 庄司達 @名古屋…

瓶の香水を買った話

ついに瓶で香水を買ってしまった。État libre d'OrangeのLa Fin du Mondeである。「キャラメルポップコーン」と形容されているのを度々目をするが、私の肌では香ばしさに加えスパイスが強く出てそこが気に入っている。最後に肌に残る甘い香りがたまらない。…

2021年/砂の時代

2021年もそれなりに映画は観たが、映画館ではやたらと砂を見た気がする。数えてみると砂が印象的な映画は3つあった。占いでは「水の時代」に入ったそうだが、私にとって2021年は「砂の時代」だったのか?※ネタバレ注意。またホドロフスキー以外は全て映画館…

感想の断片:二階堂奥歯『八本脚の蝶』

この本を買ったのは昨年1月くらいだったと記憶している。並外れた読書家がいたものだなと思った。出てくるファッションブランドは憧れながら高価で、社会人になれば買えるのだろうかと思った。私もそれなりに読書家ではあると思ってきたし、所属してきた多く…

フィアー・ストリート覚え書き

Netflixオリジナルの『フィアー・ストリート』三部作を観た。色合いや音楽、予想より激しかったスプラッター要素(特に1と3)と娯楽として非常に満足している。詳しい感想というよりは気になった点を覚え書きとして以下記す。※ネタバレ注意ルビー・レーンと…

Et mourir de plaisir

ゴス好きなのに、吸血鬼にはあまり惹かれない。確かに幼い頃「子どものための世界文学全集」で一番好きだった話はカーミラだったが、成長するにつれ次第に吸血鬼から心が離れていった。おそらく「耽美、貴族、フリルひらひら」イメージが鼻についたのだ。次…

失われゆく香りを求めて

あけましておめでとうございます。三ヶ日は毎年新しいことを始めようと決意する。だが結局考えるだけで実行したことはほとんどない。新しいことはいつも何気なく始まる。さて、2021年は香水を常用しようかと考えている。中学生の頃から香水が好きで、ミニチ…