Je t'aime comme la tombe.

フランス革命萌え語り。あとは映画と野球?ハムファンです。

2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年・私的ベスト映画5選

2023年は映画を見た一年だったので、印象に残った作品をまとめる。新作として映画館で見た映画に限った。また順位はつけたくなかったので、紹介順は順不同である。 私、オルガ・ヘプナロヴァー Pearl/パール テス (4Kリマスター版) 野球どアホウ未亡人 ロス…

墓の彼方からの愛とクィアな欲望―ミシュレ『革命の女たち』

このブログでデタラメだ作り話だと何かにつけ批判しているジュール・ミシュレのLes Femmes de la Révolution (1854)(邦訳『革命の女たち』なおネットで公開されている。)だが、文学作品として面白いのは否定できない。 オランプ・ド・グージュのイメージ受…

『野球どアホウ未亡人』"野球"の快楽に堕ちてゆけ(ネタバレあり)

※大いにネタバレしています。 先日、刈谷日劇で『野球どアホウ未亡人』を観た。 youtu.be この映画を知ったきっかけはfilmarksの「近日公開映画一覧」だった。妙にインパクトのあるポスターとタイトルに目が釘付けになった。 なんてったって「野球」で「どア…

ガブリエル・ダントンを掘り起こしたのは誰か?

ジョルジュ・ダントンの妻であるガブリエル・ダントン(旧姓シャルパンティエ)が有名になったのは、死後一週間後に遺体が墓から掘り起こされ、その時に取られたデスマスクをもとにした胸像が制作されたからである。おかげで彼女の人物像は誰も知らないのに…

歴史には善人も悪人もいない『ロスト・キング 500年越しの運命』

映画の『ロスト・キング 500年越しの運命』を見た。 歴史好き、特に ・毀誉褒貶が激しい人物が好き/興味がある ・史料が少なく、どんな人だったのかよくわからない人物が好き/興味がある ・歴史創作好き におすすめしたい。 この世にはいい人も悪い人もいな…

リュシル・デムーランの日記 (Journal 1789-1793) とその写し間違いについて(追記: mastodonアカウントの話)

革命家カミーユ・デムーランの妻で、自身もギロチンで刑死したリュシル・デムーラン(デュプレシ)の日記を読んだ。ダントンの最初の妻であるガブリエル・シャルパンティエに関する信頼できる一次資料は親しい友人だったリュシルの日記と手紙しか今のところ…

ジョルジュ・ダントンから妻ガブリエル宛の手紙(1792年12月17日)―和訳と考察

今年(2023年)3月にオークションにかけられた、革命家ダントンから妻ガブリエル・シャルパンティエ宛ての手紙を日本語訳した。同じオークションに出品されたロベスピエールが妻を亡くしたダントンに宛てた手紙はやたらと注目されたのに、亡くなったガブリエル…

笑いながら暗闇を駆ける― 極私的断章『私、オルガ・ヘプナロヴァー』

サイコパスでも、私には見識がある。 どうして自分の身に起こることが何もかもうまく行かないという理由で、周りを傷つけてはいけないのか。 いつか嘲笑と私の涙を償わせる。 二人で一つになれることはそんなに高等か。なれない人間は出来損ないか。なのにど…

アレクセイ・トルストイ『ダントンの死』感想

有名な『おおきなかぶ』の作者でもあるロシア(ソ連)の作家アレクセイ・トルストイによる、ビューヒナー『ダントンの死』の翻案 (1919)。 存在はずっと知っていたが、戦前出版で図書館によっては貴重書扱いされているらしいので読むのは諦めかけていた。だ…

『1789 バスティーユの恋人たち』2023星組ライビュ感想

書こう書こうと思っているうちにもう革命記念日が到来してしまった。 先日(7月2日)、宝塚歌劇団『1789 バスティーユの恋人たち』のライブビューイングを観に行った。一瞬だけ宝塚大劇場に行ってみようかな?とはじめは考えたが、超人気だったらしいので断念…

オシップ・ルニッチのカミーユ・デムーランについて語りたい。

今日はカミーユ・デムーランがパレ・ロワイヤルのカフェ・ド・フォワで「武器を取れ!」と演説した日である。 というわけで、今日はとにかく私にとってのベスト・カミーユである『怪傑ダントン』のオシップ・ルニッチについて語りたい。 映画のあらすじや感…

クラスTシャツの亡霊

何度も書いているが、私の通っていた高校は校則が厳しかった。学祭も同様であり、「祭」のはずなのに制約が厳しすぎ、祝祭要素をどこで見つければ良いのかわからなかった。当然服装も制服オンリーである。さて、他の高校ではクラスTシャツなるものが制作され…

あの子は弱いからこそ強いんだ- ロマン・ロラン『ダントン』感想

今回はロマン・ロランの戯曲『ダントン』の感想。 同じ題材でもビューヒナー『ダントンの死』やアンジェイ・ワイダ監督の映画『ダントン』(原作はスタニスワヴァ・プシビシェフツカの戯曲)の影に隠れている感の強い(そもそもロマン・ロラン自体最近の日本…

名古屋シネマテークの閉館に寄せて

名古屋・今池にあるミニシアター「名古屋シネマテーク」が閉館するという。私はこのニュースが報道された日に、知らないままこの映画館に行ったので余計衝撃を受けた。いやテレビ局のカメラが入ってゆくのは見たのだが、「新作映画の監督でも来たのかな」と…

ブラック校則レジスタンス?-ビューヒナー『ダントンの死』

その誠実な連中ってのが我慢ならなかったんだ。ああいうそっくり返った謹厳居士たちを見てると、蹴っとばしてやらずにはいられなくなるんだ。僕の生まれつきの気性がこうなんだからな。(p. 136) 『ダントンの死』は個人的思い入れの強い作品なので、まずは思…

虚無の「英雄」と女性の声 - 『ダントン』(1983)

映像ソフトを購入したものの長らく見れていなかったアンジェイ・ワイダ監督の『ダントン』(1983) をやっと鑑賞できた。 反「英雄」的ダントン像 女性の声と抵抗 ウィークポイント 監督:アンジェイ・ワイダ 出演:ジェラール・ドパルデュー(ダントン)ヴォ…

エドガー・アラン・ポーの美女再生譚シリーズ

エドガー・アラン・ポーの「ライジーア」「モレラ」「ベレニス」「アッシャー家の崩壊」「エレオノーラ」と、死んだ(と思われ)埋葬された女性が様々な形で甦る一連のシリーズを読んだ。死んだ女が蘇るとか、墓が掘り返され棺が開けられるとか、そういう話…

『ナポレオン獅子の時代』フランス革命編感想

大仕事が一段落したので約10年前に5巻までで止めていた長谷川哲也『ナポレオン獅子の時代』(と『覇道進撃』)をまた読もうと思って、とりあえず持ってる5巻までを読み直していた。フランス革命は5巻までで大体終わりかな?(現在7巻まで進みました。先は遠…